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失業保険の手当は年収に入る?確定申告の要否や扶養に入る基準を徹底解説

リード

失業保険は、雇用保険に加入している人が失業した時に手当を受給できる制度です。退職して収入が途絶えてしまう人には、大変心強いしくみといえます。しかし、中には確定申告(※)や扶養申請をするにあたって、「失業保険は年収に含まれるのか」「受給すると家族の扶養に入れないのか」と疑問に思う人もいるでしょう。

この記事では、ファイナンシャルプランナーの中村賢司さん監修のもと、失業保険が年収に含まれるかどうかや、確定申告が必要なケースも紹介します。また、受給しながら扶養に入る基準や注意点も解説します。

※確定申告とは、日本の納税制度のひとつです。1月1日から12月31日までの所得に対する納税額の申請を行うことで、適切な金額の税金を納めたり、余計に税金を納めていた場合には還付金という形でお金が返ってきたりします。原則としては、会社員の給与については企業が代わりに年末調整を行ってくれますが、副収入がある場合は、確定申告が必要です。確定申告については、以下の記事をご覧ください。

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コラムサマリ

■失業保険による手当は年収に含まれない

■失業保険の受給後に、確定申告をしたほうがいい3つのケース

・①失業保険の受給期間中、アルバイト・パートで収入を得た場合

・②年内に再就職できず、会社に年末調整してもらえなかった場合

・③再就職したが、失業中に納めた社会保険料がある場合

■失業保険を受給しながら、扶養に入るための条件

・「税法上の扶養」に入れる条件は、年収103万円以下

・「社会保険上の扶養」に入れる条件は、年収130万円未満

■失業保険を受給しながら、扶養に入る2つのメリット

・①配偶者控除により、税金の優遇が受けられる

・②被扶養者は、国民健康保険・国民年金を払わなくてもいい

■失業保険を受給しながら、扶養に入る時の2つの注意点

・①社会保険上の扶養は、失業保険も収入に含まれる

・②不正受給が発覚すると罰則が適用される

■失業保険は年収に含まれず、課税もされない

本文

失業保険による手当は年収に含まれない

そもそも、失業保険は正式には雇用保険といい、この雇用保険に加入している人が失業や自己都合退職などの“特定の条件下”で受給できるお金のことを、失業手当(正確には基本手当)といいます。

この失業手当は収入には含まれず、非課税扱いとなるため、税金がかかりません1)。これは失業手当が、つぎの就職先が見つかるまでの期間の生活費を保障することを目的としているためです。また、失業手当を利用した場合、一定の期間内に再就職先が決まった人が受給できる再就職手当についても、非課税扱いとなります。

なお、失業手当は収入として見なされないため、退職前の収入によっては配偶者控除の対象となる場合もあるでしょう。このケースについては、後述します。

参考資料

1)国税庁「課税される所得と非課税所得」

失業保険の受給後に、確定申告をしたほうがいい3つのケース

失業手当は税法上の収入にあたらないため、原則として確定申告を行う必要はありません。しかし、場合によっては失業期間があった年に確定申告をしたほうがいいケースもあります。具体的には、以下の3つのケースです。

①失業保険の受給期間中、アルバイト・パートで収入を得た場合

②年内に再就職できず、会社に年末調整してもらえなかった場合

③再就職したが、失業中に納めた社会保険料がある場合

確定申告により、還付金を受け取ることができる場合もあります。それぞれ詳しく解説します。

①失業保険の受給期間中、アルバイト・パートで収入を得た場合

前提として、アルバイト・パートで週20時間以上働いている場合は、失業の状態とはいえないため、失業手当は受給できません。

ただし、「1週間の所定労働時間が20時間未満」「1日の労働時間が4時間未満」を条件2)として、失業手当を受給しながら、アルバイト・パートで収入を得ることができます。

このような形でのアルバイト・パートの収入が年間20万円を超えた場合、原則として確定申告が必要です。

なお、詳しくは後述しますが、失業手当受給中のアルバイト・パートを申告しないと、失業手当の不正受給として厳しい処分を受ける場合があります。必ず申告するようにしましょう。

参考資料

2)厚生労働省 兵庫労働局「はろカフェ vol.4」

②年内に再就職できず、会社に年末調整してもらえなかった場合

年内に再就職できなかった場合、確定申告をしたほうがいいでしょう。確定申告をすることで、退職前に納め過ぎていた所得税が戻ってくるかもしれません。

会社に就職して収入がある場合、所得税は源泉徴収として毎月の給料から天引きされます。源泉徴収は、見込みの年収をもとに所得税を先払いするしくみなので、本来納める必要のある所得税と金額が乖離する場合もあるでしょう。そこで、年末に正式な所得税額を計算し、還付や追加徴収をするのが年末調整です3)。

退職後、年内に再就職すれば、新しい勤務先が前職の収入と合わせて年末調整をしてくれるので、確定申告は不要です。一方、年内に再就職しなかった場合は、年末調整ができないので自分で確定申告する必要があります。退職して収入が減った人は、所得税の還付金を受け取れる可能性があるため確認してみましょう。

参考資料

3)国税庁「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)

③再就職したが、失業中に納めた社会保険料がある場合

失業中に社会保険料(国民健康保険料や国民年金の保険料など)を自分で納めた場合は、確定申告したほうがいいでしょう。納めた保険料が所得から控除され、所得税が減る可能性があるためです4)。

就職している場合、従業員の社会保険・健康保険や厚生年金などの社会保険料は、給与から天引きされ会社が代わりに健康保険組合や自治体へ納めています。しかし、失業中に国民健康保険や国民年金に加入した場合は、自分で確定申告する必要があります。

なお、確定申告時の手続きには、国民年金の領収書と日本年金機構が発行する「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」5)が必要です。また、国民健康保険については、納付額を記入するだけで申告ができるので、納付証明は必要ありません6)。

参考資料

4)国税庁「「所得から差し引かれる金額」(所得控除)」

5)日本年金機構「令和3年の社会保険料(国民年金保険料)控除証明書の発行について」

6)ともに、生きる。江戸川区「【納付】確定申告や年末調整の関係で、国民年金保険料の納付額がわかる書類が欲しいのですが。」

失業保険を受給しながら、扶養に入るための条件

扶養とは、経済的に自立していない人が親族から経済的な援助を受けることを指し、こういった状況に対して、国は優遇措置をとっています。

優遇措置の種類には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2つが存在します。

「税制上の扶養」とは、家族の生計を担っている人(扶養者)が、配偶者や子ども、親など、収入の少ない家族を経済的に支えることです。

一方、「社会保険上の扶養」とは、納税者本人や配偶者が条件を満たす場合に、一定額を納税者の給与所得から控除する所得控除の制度です。

なお、失業手当を受給しながら扶養に入る条件は、以下のいずれかに該当することです。

● 「税法上の扶養」に入れる条件は、年収103万円以下

● 「社会保険上の扶養」に入れる条件は、年収130万円未満                               

それぞれ詳しく見ていきましょう。

「税法上の扶養」に入れる条件は、年収103万円以下

税法上、配偶者の扶養に入れる基準は年収が103万円以下の場合7)です。一般的に、年間の給与所得が103万円以下であれば、扶養している夫(妻)が配偶者控除を受けられます。

なお、退職前の給与は、職場から出される源泉徴収票でわかります。源泉徴収票は、勤めていた会社が作成する書類です。所得税法第226条8)では、退職後1カ月以内に源泉徴収票の交付が義務付けられています。源泉徴収票の発行が遅れている場合は、勤務していた会社に問い合わせてみましょう。

参考資料

7)国税庁「扶養控除」

8)国税庁「第 11 源泉徴収票及ひ?支払調書の提出」

「社会保険上の扶養」に入れる条件は、年収130万円未満

扶養親族として家族の健康保険に加入できる基準は、年収130万円未満です。厳密には、今後の年収が130万円未満になる予定であれば、扶養の対象となります。

なお、配偶者の健康保険に扶養親族として入るには、失業手当を含めた収入の見込み額で判断されます。加入できる目安は、失業手当で受給される1日の基本手当日額が3,611円まで9)です。それ以上だと年間収入が130万円に達してしまうため、扶養から外れる可能性があります。

基本手当日額は、つぎの計算式で求められます10)。

賃金日額 = 退職する6カ月間の給与(賞与除く)÷ 180日                          

基本手当日額 = 賃金日額 × 給付率(45〜80%)

給付額は退職時の年齢や収入によって違いますので、詳しくはハローワークへ問い合わせてみましょう。また、配偶者が加入する健康保険組合によって、扶養に入る条件が違う場合もあります。扶養に入れるかどうか、配偶者の務める会社に確認してみてください。

参考資料

9)全国健康保険協会「退職後の健康保険のご案内」

10)厚生労働省「雇用保険の基本手当日額の変更」

失業保険を受給しながら、扶養に入る2つのメリット

前述したように、条件を満たせば失業手当を受給しながら、扶養に入れることがわかりました。では、扶養に入るとどのようなメリットが考えられるのでしょうか。

失業手当を受給しながら扶養親族に入るメリットは、つぎの2点です。

①配偶者控除により、税金の優遇が受けられる

②被扶養者は、国民健康保険・国民年金を払わなくてもいい                 

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①配偶者控除により、税金の優遇が受けられる

失業手当を受給しながら扶養に入れば、配偶者控除の対象となり、世帯として税の負担が軽くなります。配偶者控除とは、配偶者と生計をともにする納税者が所得控除を受けられる制度です。配偶者の年収が103万円以下で、納税者の年間の合計所得金額が900万円以下なら、38万円の控除を受けられます11)。

一方、配偶者の年収が103万円を超えたとしても、配偶者特別控除を受けられる場合もあります。たとえば、納税者の年間の合計所得金額が900万円以下の場合、妻(夫)の年間の合計所得金額が133万円以下なら3万円が控除されます12)。自分がどのケースに当てはまるか確認してみましょう。

参考資料

11)国税庁「配偶者控除」

12)国税庁「配偶者特別控除」

②被扶養者は、国民健康保険・国民年金を払わなくてもいい   

退職後は、自分で国民健康保険や国民年金に加入し直す必要があります。しかし、扶養親族として配偶者の社会保険に加入すると、国民健康保険や国民年金を自分で納める必要がなくなります。つぎの就職先を探す間、保険や年金の負担が減らせるのは大きなメリットでしょう。

個人で国民年金に加入した場合、2022年度の国民年金支払額は月額1万6,590円13)です。国民健康保険は前年度の収入で支払額が決まるため、収入が減る失業中は大きな負担になるでしょう。

失業手当の日額が3,611円までなら、社会保険上の扶養親族にあたるため、配偶者が加入する健康保険を使えます。詳しくは配偶者の会社に問い合わせてみてください。

参考資料

13)日本年金機構「国民年金保険料の変遷」

失業保険を受給しながら、扶養に入る時の2つの注意点

前述したように、失業手当を受給しながら扶養に入るメリットは大きく、条件が合えば利用したいところです。しかし、その際には以下の2つの注意点があります。

①社会保険上の扶養は、失業保険も収入に含まれる

②不正受給が発覚すると罰則が適用される

条件を満たさないのに扶養親族に入った場合、ペナルティーを受けるおそれがあります。それぞれ詳しく解説します。

①社会保険上の扶養は、失業保険も収入に含まれる

失業手当は税金上では非課税ですが、社会保険上では収入扱いになります。確定申告の時とは考え方が違うので、注意が必要です。

扶養に入る際は失業手当の基本手当日額をチェックし、配偶者が加入している健康保険組合に加入の可否を確認すると確実でしょう。

②不正受給が発覚すると罰則が適用される

扶養に入りながら失業手当を受給する時、基本手当日額が3,612円以上なら扶養と見なされません。しかし、その状態で扶養から抜け忘れると、扶養に入っていた期間分の年金や保険料をさかのぼって納めるように命じられます。

また、失業手当の受給中に、アルバイト・パートをしているにもかかわらず、確定申告をしなかった場合は不正受給と見なされます。不正受給が発覚した場合、失業手当の返還や不正に受給した金額の2倍の納付が命じられるペナルティーが課せられます14)。扶養手続きにはマイナンバーを記入するので、失業手当の不正受給が発覚する可能性は高いといえます。大きなリスクとなるおそれがあるため、正当な手続きを踏みましょう。

参考資料

14)ハローワーク インターネットサービス「不正受給の典型例」

失業保険は年収に含まれず、課税もされない

再就職をサポートするための失業手当は、経済面の不安を減らしてくれる心強い制度です。また、支給される失業手当の金額が、税金や扶養の条件に当てはまるか確認すれば、支出を減らせるでしょう。この記事を参考に、失業手当や扶養制度を賢く活用して、再就職までの期間を乗り切りましょう。

この記事の執筆協力

執筆者名

マネコミ編集部

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