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医療費控除の申請はいつまでさかのぼれる?期限や対象となる費用を紹介

リード

「申請を忘れた医療費も医療費控除を受けられる?」「医療費控除の申請期間っていつまで?」

医療費控除の制度を最近知った人の中には、いつまでさかのぼって申請することができるのかや、いつまでに申請をしなければいけないのかが気になっている人もいるでしょう。

この記事では、ファイナンシャルプランナーの荒木千秋さん監修のもと、医療費控除がいつまでさかのぼれるかや申請期限についてわかりやすく解説します。対象となる医療費の条件と、申請時の注意点も併せてご紹介します。この記事を読めば、スムーズに医療費控除の申請ができるようになるでしょう。

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コラムサマリ

■医療費控除の基本的な申請期限は翌年の2月16日~3月15日

・確定申告の医療費控除は過去5年分までさかのぼって申請できる

■医療費控除を5年前までさかのぼる場合、領収書は必要?

■確定申告の医療費控除の対象になる費用

・①治療費

・②薬剤費

・③看護師などによる療養費

・④出産時にかかる費用

・⑤介護費用

■確定申告で療費控除を利用する際の2つの注意点

・①セルフメディケーション税制と併用できない

・② ふるさと納税も併せて確定申告が必要である

■医療費控除の確定申告のやり方を4ステップで解説

・医療費控除申請の流れ

・【STEP1】確定申告に必要な書類を準備する

・【STEP2】確定申告書、医療費控除の明細書を作成する

・【STEP3】書類ができたら、税務署に提出する

・【STEP4】口座への入金を確認する

■忘れていた医療費控除は5年以内ならさかのぼることができる

本文

医療費控除の基本的な申請期限は翌年の2月16日〜3月15日

医療費控除1)とは、1年間に支払った医療費が一定の金額を超えた場合、確定申告をすることで、納めた所得税の一部が「還付金」として戻ってくる「所得控除」の制度です。

原則として医療費控除の申請は、医療費を支払った翌年の確定申告の期間内(原則2月16日?3月15日)に行わなければいけません。これは、医療費控除の申請が確定申告の一部に含まれるためです。

ただし、会社員のように本来確定申告をしなくてもよい人であれば、確定申告期間より前でも申請することができます。

基本的には1年間の医療費が10万円以上かかった場合が医療費控除の対象ですが、年間の給与所得が200万円未満の人は、支払った医療費が総所得金額などの5%以上なら申請できます。

ちなみに所得控除とは、所得税額を計算する時に個人の事情を加味して税額を控除できる制度です。状況に合わせて活用すれば納税時の負担を減らすことができ、払い過ぎた税金があった場合に還付金を受け取れます。

控除額は支払った医療費をもとに算出します。また、医療費控除で実際にいくら還付されるかは、所得金額や保険金などで補填される金額によっても変わります。

参考資料

1)国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」

確定申告の医療費控除は過去5年分までさかのぼって申請できる

前述で、医療費控除の申請は、医療費を支払った翌年の確定申告の期間内(原則2月16日〜3月15日)に行わなければいけないとご紹介しました。しかしこの期間を過ぎた場合でも、過去5年以内であればさかのぼって申請することが可能2)です。

正確には、医療費を支払った翌年の1月1日から5年以内までが申請の期限です。

たとえば、令和1年に支払った医療費の医療費控除の申請が可能な期間は、令和2年1月1日から令和6年12月31日までです。申告期間の数え方を間違わないよう注意しましょう。

また、12月31日は医療費控除による還付金の消滅時効が成立する日となっています。そのため、5年後の12月31日を過ぎてしまった際には、それ以上さかのぼって申請することはできません。過去の医療費を申請したい場合には、よく注意しましょう。

医療費控除を5年前までさかのぼる場合、領収書は必要?

結論からいうと、2023年から5年前までさかのぼって医療費控除を申告する場合、領収書は不要です。2017年分の確定申告から、医療費控除の適用を受けるためには「医療費控除の明細書」が必要になりました。それに伴い、申請時に医療費の領収書の添付が不要になりました。

ただし、医療費控除の明細書に書かれた内容を確認するため、税務署から領収書の提示や提出を求められる場合があります。万が一に備えて、確定申告期限から5年間は領収書を捨てずに保管しておくのが安心でしょう。明細書を提出することで領収書の保管を忘れてしまうことも少なくないので、注意しましょう。

参考資料

2)国税庁「還付申告」

確定申告の医療費控除の対象になる費用

医療費として支払ったすべての費用が、医療費控除の対象というわけではありません。医療費控除の対象となるのは、主に以下のとおりです。

〈表〉医療費控除の対象となる費用3)

● 医師または歯科医師による診察・治療の料金

● 治療・療養に必要な医薬品の購入代金

● 病院や診療所、介護施設や助産所に収容される際の人件費

● あん摩マッサージ指圧師、はり師やきゅう師、柔道整復師による治療のための施術の料金

● 保健師、看護師または准看護師、特に依頼した人(※)による療養の料金

● 助産師による分娩介助の料金

● 介護保険などの制度で提供された施設・居宅サービスの自己負担額

● 診療を受けるために必要な通院費や送迎費、入院時の部屋代や食事代、医療用器具購入費

● 診療や治療を受けるために必要となる義手や義足、松葉杖や補聴器、義歯や眼鏡の購入費                                          

※:特に依頼した人については後述の「㈫看護師などによる療養費」の項目で説明しています。

対象となるのは、上記に該当する費用のうち、一般的な支出水準を著しく超えない部分とされています。以下では、上記をわかりやすく5つに分けてご紹介していきます。

①治療費

②薬剤費

③看護師などによる療養費              

④出産時にかかる費用

⑤介護費

それぞれ詳しくみていきましょう。

①治療費

病院での治療にかかる治療費と診療費、入院費は、すべて医療費控除の対象ですが、健康診断の費用や医師などへの謝礼金などは対象外です。以下の費用が医療費控除の対象となります。

● 通院にかかる交通費

● 医師などの送迎費

● 医療用器具などの購入費やレンタル料

● 治療に必要な義手や義足、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費                                    

● おむつ代(医師におむつが必要と認められた場合)

また、以下のような人に施術をお願いする場合も、疲労回復や体調改善などを除く治療に限り、医療費控除の対象になります。

● マッサージ指圧師                                                                                                         

● はり師

● きゅう師

● 柔道整復師

併せて覚えておきましょう。

②薬剤費

治療にかかる薬剤費も医療費控除の対象です。しかし、ビタミン剤をはじめとする、以下の目的で購入した薬剤費は医療費控除の対象にならないので、注意しましょう。

● 病気の予防

● 健康増進                                             

ただし、処方箋なしで薬局やドラッグストアなどで購入できるOTC医薬品(特定一般用医薬品など)は、セルフメディケーション税制4)の対象になります。

セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例として対象医薬品(OTC医薬品)を年間総額1万2,000円以上購入した際に利用できる制度です。1万2,000円を超過した分の費用(上限8万8,000円)を医療費控除と同じように所得控除にすることができます。

セルフメディケーション税制を利用するには、健康保持や病気の予防のために以下のような取り組みを実施していることが条件となっています。

〈表〉セルフメディケーション税制の対象となる条件4)

● 健康保険組合などが実施している健康診査                                

● 予防接種

● 勤務先の健康診断

● 特定健康診査

● 特定保健指導

● 市区町村が実施するがん検診

なお、セルフメディケーション税制は、一般的な医療費控除と併用ができません5)。どちらか一方の制度を選択しての利用となります。

参考資料

3)国税庁「医療費控除の対象となる医療費」

4)国税庁「セルフメディケーション税制とは」

5)国税庁「セルフメディケーション税制と通常の医療費控除との選択適用」

③看護師などによる療養費

以下の人たちに対して療養で支払った費用も、医療費控除の対象3)です。

● 保健師

● 看護師

● 准看護師

● 特に依頼した人                                              

「特に依頼した人」とは、家政婦に付き添いを依頼した場合などが含まれます。ここで注意が必要なのは、家族や親族に付き添いを依頼した場合です。この場合には、付添費として費用を支払ったとしても、医療費控除の対象にはなりません。

また、通常発生する費用のほかに、お礼としていくらか包む人もいるでしょう。しかし、このお金も医療費控除の対象外です。申請しても、医療費控除の還付は受けられないので覚えておきましょう。

④出産時にかかる費用

出産時にかかる以下の費用も、医療費控除の対象です。

● 妊娠と診断されてから発生する定期検診や検査・入院・通院にかかる費用

● 入院中の食事代

通院にかかる費用には、交通費が含まれます。交通費は原則バスや電車などの公共交通機関のみが対象となりますが、それらの利用が困難な場合に限り、タクシー代も医療費控除の対象となります。電車やバスには領収書がないので、家計簿などに利用履歴を記録して、明確に説明できるようにしておきましょう。

また、以下の費用は医療費控除の対象にならないので、注意しましょう。

● 里帰り出産のための帰省にかかる交通費                                            

● 入院時の洗面具など生活用品の購入費

● 入院時の出前や外食にかかった費用

あくまで、やむを得ず発生した費用が対象になると覚えておきましょう。

⑤介護費用

介護費用も医療費控除の対象となるものがあります6)。

要介護者と要支援者に向けて、居宅介護サービス事業者などから提供されるもののうち、自宅で生活する人を対象にした介護サービス(居宅サービスなど)には、以下の2つがあります。

● 医療系サービス(看護師や保健師などによる)                           

● 福祉系サービス(介護福祉士などによる)

これらのサービスのうち、看護や医学的管理下における療養上の世話などにかかる自己負担額は、医療費控除の対象です。医療費控除の対象になる金額は領収書に記載されているので、確認しましょう。

また、以下の施設への通所、リハビリテーションや通所介護のために必要なサービスの費用も、医療費控除の対象です。

● 介護老人保健施設

● 介護医療院

● 指定介護療養型医療施設

● 指定介護老人福祉施設

● 指定地域密着型介護老人福祉施設                                      

参考資料

6)国税庁「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」

確定申告で療費控除を利用する際の2つの注意点

医療費控除を申請する際は、注意しなければならないポイントがいくつかあります。具体的には、以下の2つです。

①セルフメディケーション税制と併用できない                            

②ふるさと納税も併せて確定申告が必要

それぞれ詳しく解説します。

①セルフメディケーション税制と併用できない

繰り返しになりますが、医療費控除はセルフメディケーション税制との併用ができません。医療費控除とセルフメディケーション税制の減税額は、ウェブサイトなどで試算できます。どちらを利用するか迷った時は、シミュレーションしてみましょう。

②ふるさと納税も併せて確定申告が必要

医療費控除の対象となる年にふるさと納税を行った場合、併せて確定申告をする必要があります。ふるさと納税には、確定申告が不要の「ふるさと納税ワンストップ特例」があります。ふるさと納税先の自治体数が5団体以内、かつ各自治体に申請した場合に適用される制度です7)。

しかし、医療費控除を受けるために確定申告をする場合は、ワンストップ特例制度が適用されません。すでに申請済みの場合でも適用外となり、ふるさと納税利用分全ての確定申告が必要になります。もし忘れた場合は申告漏れとなってしまうので、注意しましょう。

参考資料

7)国税庁「寄附金控除(ふるさと納税など)を受けられる方へ」

医療費控除の確定申告のやり方を4ステップで解説

医療費控除を申請するためには、確定申告の手続きが必要です。では、確定申告で具体的にどのように手続きをすれば、医療費控除を受けられるのか、詳しくご紹介します。

医療費控除申請の流れ

まずは、医療費控除を申請するために、確定申告の全体の流れを把握しておきましょう。確定申告から口座への入金までの流れは以下のようになります。順に解説していきます。

【STEP1】確定申告に必要な書類を準備する

【STEP2】確定申告書、医療費控除の明細書を作成する                        

【STEP3】書類ができたら、税務署に提出する

【STEP4】口座への入金を確認する

【STEP1】確定申告に必要な書類を準備する

確定申告で医療費控除を申請するために必要な書類はつぎのとおりです。

● 確定申告書

● 医療費控除の明細書

● マイナンバーカード

(持っていない場合は通知カードと本人確認書類)

● 医療費の領収書(※保管しておくことを忘れずに)                          

確定申告書の原紙は国税局のウェブサイトから印刷するか、自治体の役所や税務署でもらいましょう。マイナンバーカードや本人確認書類も準備しておきます。

【STEP2】確定申告書、医療費控除の明細書を作成する

必要な書類が準備できたら、確定申告書と医療費控除の明細書を作成します。基本的には、確定申告の一環として医療費控除の入力を進めます。

確定申告の際には、年間収支の記録が必須です。会社員や専業主婦(夫)は確定申告書A、フリーランスや個人事業主はBを目安に選んでください。確定申告書では、給与や副業などの所得を記入します。給与所得は、会社から発行される源泉徴収票などを参考にしましょう。

医療費控除の明細書は、国税庁のウェブサイトから取得できます。なお、健康保険組合などが発行する「医療費のお知らせ」があれば、代わりに添付することで明細書の記入が省略できます。

医療費控除を受けるには、医療費の計算が必要ですが、年間の医療費をすべて手動で計算することは面倒な作業でしょう。国税庁では、医療費を自動で計算してくれる「医療費集計フォーム」を提供しています。ファイルはエクセル形式で、金額を入力すると、自動で計算してくれるためとても便利です。

エクセルに入力する際には、以下の項目が必須なため、日頃からレシートやメモを記録しておきましょう。

● 病院や薬局名(交通費もここに入力)                                   

● 医療費

● 利用年月日

すべての入力を終え、明細書作成ボタンをクリックすると自動的に明細が作成されます。

【STEP3】書類ができたら、税務署に提出する

税務署への提出方法は3つあります。

(1)所轄の税務署に持参する

(2)所轄の税務署に郵送する

(3)国税庁のウェブサイトで作成した確定申告書をe-Tax(インターネット)で送信する                 

確定申告で使用した領収書類は、5年間の保管義務があるので、捨てずに必ず保管しましょう。紙面で記入した場合は税務署に持参するほか、郵送も可能です。

マイナンバーカードを持っている人は、国税電子申告・納税システム(e-Tax)のウェブサイトから送信が可能です。会計サービスとe-Taxを併用すると、オンラインで確定申告が完結できるので便利です。

【STEP4】口座への入金を確認する

口座振り込みをお知らせするハガキが届きます。内容に間違いがないか念のため確認しましょう。還付金の振り込みは確定申告後、1カ月から1カ月半程度かかると想定しておきましょう。

忘れていた医療費控除は5年以内ならさかのぼることができる

医療費控除は、医療費を支払った翌年の1月1日から5年以内であれば過去分もさかのぼって申請が可能です。申請ができていない医療費があれば、消滅時効が成立しないうちに確定申告をしましょう。

また、医療費控除を受ける際には注意点があります。特にセルフメディケーション税制が利用できる場合は、どちらのほうがよりお金が戻ってくるのか比較することがおすすめです。双方の控除金額を試算し、メリットの大きいほうを選びましょう。

この記事の執筆協力

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